宝塚歌劇 雪組

雪組公演『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』宝塚版と映画版の違い

2020年1月5日

どうも、
そむくくです。

2020/02/16 追記しました。
2020/01/08 追記しました。
2020/01/05 一部更新しました。

2020年の元日、雪組公演『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』の初日を観てきました。
原作となった映画版も観ているのですが両方観て思ったのは、世界観を知っておくという意味で映画版も観たほうが良いということです。
しかし映画版は3時間49分と長尺で、説明・台詞が少なく余白が多い割に3つの時代を行き来する構成となっており、後半の展開も難解で、一度観ただけではよく解らない内容です。
(青年期の中でも時間の行き来があるのでさらに混乱します)
この作品は気軽に観られるような作品ではありません。

そこで映画版を観なくてもある程度解る様に、映画の進行に沿ったストーリー展開を表にしてみました。
大事なシーンには具体的な内容も入れています。

※宝塚版ではカットされていた部分を赤字に、大きく変わった部分を青字にしてあります。

 

この作品の押さえどころ

この作品は少年期、青年期、晩年の3つの時代で構成されています。
特に大事なのは青年期なので、ここをしっかり把握しておくことが大事です。
宝塚版の第二幕は映画後半の難解なとこをろ解り易く変更しているのですが、「連邦準備銀行襲撃」と「ジミー(労組)との関係」この2つが特に大事です。
ここが解らないと楽しめません。(ジェンヌさん個人に関しては全く別の話ですよ)

映画版タイムテーブル(長いです)

時間は映画が始まってからの経過時間です。
映画版を観るときの参考にしてください。
晩年とありますが、宝塚版では壮年期となっています。
プログラムにある1958年の話は映画版では1967年以降の話になります。
ジェンヌさん皆さん若いですから、ここは設定を変えたのでしょう。
※晩年と言っても60歳くらいです。(1967年のアメリカの平均寿命は70.56歳)

表はスマホでは読み辛いと思いますがご容赦ください。(横向きにするとビックリするくらい見易くなります)
これ以降、連邦準備銀行はFRBと記述します。
宝塚版との違いは随時更新します。

 

時間 少年期 青年期 晩年
0:44 フランキー率いるマフィアがイヴにヌードルスの居場所を問い詰めるもイヴは知らないと答え射殺される(宝塚版ではエヴァ)。ファット・モーを拷問してヌードルスの居場所を聞き出そうとするフランキー。その時ヌードルスはチャイナ劇場にある阿片窟に居た
※これはFRB襲撃を警察に密告したヌードルスを、マフィアを裏切ったとして追っている状況。一度見ただけだとここさえ理解できないかも。
※ここだけでも時間が入れ替わっていて解りづらいです。
※宝塚版では第二幕のFRB襲撃後です。
9:15 (阿片窟でのヌードルスの回想)雨の中、FRB襲撃犯3人の遺体が回収される。その様子を群衆の中から見るヌードルス。パッツィとコックアイの遺体確認。もうひとりの顔は焼け焦げて判別不能であるがマックスの名前が入ったタグを付けられる。
※宝塚版では第二幕のFRB襲撃後にこのシーンが有りますが遺体確認もシーンはありません。
11:40 チャイナ劇場にフランキーが来る。間一髪のところでヌードルスはチャイナ劇場から逃げる。
※宝塚版では第二幕のFRB襲撃後です。
13:40 ヌードルス、ファット・モーを救出。
※宝塚版では第二幕のFRB襲撃後です。
18:09 ヌードルス、コインロッカーにある鞄の中身が空になっていることに気付く。マフィアから逃れるためバスでニューヨークを離れる。
※宝塚版では第二幕のFRB襲撃後です。
22:05 ヌードルス、ローワー・イーストサイドに戻ってくる。そのままファット・モーの店に向かう。
※宝塚版ではこの辺りから第一幕が始まります
27:30 ファット・モーと再会。ヌードルスは自分が政治家(ベイリー長官)のパーティに招かれたことについてファット・モーから情報を得ようとする。デボラが大スターになったことを知る。デボラはファット・モーの妹※宝塚版ではヌードルスは鞄を2つ持っており、その1つに現金と仕事の依頼カードが入っているのをファット・モーに見せるシーンがここです
37:40 デボラひとりが踊るバレエを一人で覗き見するヌードルス。このシーンでアマポーラが流れる。
※とてもいいシーンですが、宝塚版ではバレエ教室になっていてムードも何も無いです
43:00 ヌードルスらギャングの仕事
※宝塚版ではスリ、映画版では屋台を放火してます。
45:33 マックスが酔っぱらいから懐中時計を盗む(マックス登場)
※宝塚版では懐中時計を盗むのはヌードルス
52:50 ヌードルス、マックスと意気投合
1h
07:52
デボラ、ヌードルスに思いを告白するも不良は恋人にはできないと告げる
※宝塚版ではオーディションに受かったデボラを祝福するシーンになってます
1h
11:00
ヌードルスとマックス、商売敵のバグジー一味にボコボコにされる。
※宝塚版ではこのシーンとドミニクが刺殺されるシーンが一緒になっています
1h
16:15
ヌードルスの事業が軌道に乗る。仲間内で共同基金を始め、コインロッカーの鞄に貯める。
※映画版ではアル・カポネと取引するシーンがありますが宝塚版ではカットです
※密造酒を運ぶ方法が映画版と宝塚版では違います。
1h
24:40
仲間のドミニクがバグジーに射殺される。これに逆上したヌードルスがバグジーと警官を刺殺し刑務所へ
※宝塚版ではドミニクは刺殺
1h
30:00
ヌードルス、FRB襲撃で死んだ3人(マックス、パッツィ、コックアイ)の墓参り。そこでコインロッカーの鍵を見つける
※宝塚版は招待状に同封
1h
33:40
コインロッカーにあったのは鞄。鞄の中には仕事の依頼のメモ書きと前払金として多額の現金があった
※このシーンは宝塚版には無い
1h
36:08
ヌードルス、刑務所から出所。出迎えに来たマックスと再会。ファット・モーが支配人をする闇酒場にマックスがヌードルスを連れて行く
※宝塚版ではパッツィとコックアイも一緒に出迎え
1h
40:20
パッツィ、コックアイ、ファット・モーと再会
※宝塚版ではここにキャロルが居ます。映画版ではキャロルに出会うのはこの後です。
映画版と宝塚版ではキャロルの人物背景が全く違います。
1h
44:08
デボラと再会。このシーンでアマポーラが流れる
1h
47:47
ヌードルス、フランキーと出会う。フランキーがヌードルス、マックス、パッツィ、コックアイの4人をアポカリプスの4騎士と呼ぶ。フランキーが親友のジョーを紹介。ジョーが宝石店襲撃の仕事をヌードルスに持ちかける
1h
53:55
宝石店襲撃。ヌードルス、宝石商の妻のキャロルと出会う
※宝塚版では宝石商の妻はキャロルではありません
1h
56:27
マックスらがジョー一味を殺害。
2h
02:50
ベイリー商務長官の疑惑報道
運輸業者組合の年金基金の不正流用疑惑
2h
05:30
ジミーと出会う。労働組合との関係が始まる
2h
26:17
ヌードルスが海辺のレストランでデボラをもてなす(バックはアマポーラの生演奏)。ヌードルスがデボラに愛の告白をするが、女優として頂点に立つ目標のために別れを切り出すデボラ。納得がいかなかったヌードルスが帰りのリムジンの中でデボラを強姦。
※宝塚版ではリムジンのシーンは当然なし。スイートルームでデボラから拒絶されるシーンに変わっている
2h
39:18
駅のホームでデボラとの別れ
※宝塚版では全カットです
2h
40:55
映画はここでインターミッション(一時休憩)。
宝塚は第一幕の終り
2h
41:30
労働組合と会社の闘争激化。ジミーが脚を撃たれて負傷したことでマックスが報復、組合が勝利してスト終結。ジミーは全米労組の星に。この一連の闘争でマックス一味が政党から支持を受ける。政治家から新規事業も持ちかけられ、同意するマックスと反対するヌードルスの間に亀裂が生じる。
※宝塚版では不動産投資になっています。
このシーンに絡むジミーが入院している病室のシーンは宝塚版では銀橋での会話に変更されていますが、映画のような内容ではありません。
2h
54:20
マイアミのビーチ。禁酒法が廃止になるニュースが入る。このままでは先がないと考えたマックスがFRB襲撃を提案。ヌードルスが狂ってると切返してマックス激怒。(ここでマックスはヌードルスを捨てることを決意か?)
※宝塚版では提案するタイミングが違います。
※ヌードルスがイヴを連れていることで二人が恋人関係であると想像できる。宝塚版ではイヴ(エヴァ)はヌードルスとは無関係
2h
59:20
マックスを救うためにFRB襲撃を警察に密告するようキャロルがヌードルスに嘆願する
3h
03:28
ファット・モーの闇酒場で禁酒法の葬式と廃止祝賀パーティが催される。FRB襲撃前の乾杯。ヌードルスがイヴにしばらく戻れないと告げる。
※宝塚版ではここにイヴは居ない
3h
08:26
ヌードルス、別室に移りFRB襲撃計画を電話で警察に密告する。
※この後が映画最初のシーンに繋がります。
※宝塚版ではこの後にFRB襲撃シーンがありますが、映画版にはありません。
3h
11:57
サナトリウムに入っているキャロルをヌードルスが訪れる。FRB襲撃時のマックスの様子を話し始めるキャロル。ヌードルスは展示されていた開所式の写真にデボラが写っていることに気がついたがキャロルにはデボラの記憶が無かった
3h
13:24
デボラの舞台の楽屋を突然訪れるヌードルス。デボラとは30数年ぶりの再会。舞台化粧を落とすデボラとヌードルスの会話が淡々と続く。ヌードルスは自分をパーティに招待したベイリー長官の事をデボラから聞き出そうとする。デボラはパーティには出席しないようにヌードルスに懇願する。デボラはベイリーにはデビットと言う名の息子がいることを話し始める。
デイビッドの母親がデボラであると匂わせる芝居もあって、この楽屋の会話がデボラの一番の見せ場なのに宝塚版にはこのシーンが無く、サナトリウムのシーンと一緒になっています
3h
22:55
デイビッドと名乗る青年と初対面するヌードルス。青年のマックスそっくりな顔を見て全てを悟ったヌードルス。自分をパーティに招待したのはマックスである事に気付く。(デイビッドの名はヌードルスの本名)
※宝塚版では全カットです。いいシーンなんだけどなあ…
3h
23:44
マックスに招かれたパーティにヌードルスが出席、マックスが居る部屋に案内される。マックスとヌードルスの再会。マックスは労働組合の影響力を使って商務長官になっており、その癒着が問題になっていた。鞄に入っていた前金の仕事というのはマックスを殺すこと。自分を殺すように銃を差し出すマックス。ヌードルスは拒否。FRB襲撃の真相を話すマックス
※宝塚版では銃の出処が違います。
3h
35:40
FRB襲撃で友人は死んだとして目の前にいるマックスを一政治家として対応するヌードルス。無罪になることを祈るとマックスに言い残して部屋を出る
※宝塚版にもこのシーンが有りますが部屋を出るときの台詞が違います
3h
37:40
ヌードルスの後を追うマックス。ヌードルスはマックスに気がつくが通りがかった清掃車にマックスが隠れてしまいよく見えない。このときマックスは清掃車に身を投げて自殺する(映像は無く仄めかすだけ)。清掃車が通り過ぎた後、マックスが居なくなったことをヌードルスは不思議に思いながら遠ざかる清掃車を見つめる続ける。
※宝塚版では自殺のシーンが違います
3h
41:25
此処からラストまでは理解不能ですが、解らなくても問題ありません。(もう話は終わってるし)
※宝塚版にはありません

 

宝塚版では映画にはなかったシーン・登場人物の追加や、映画で中途半端なシーンを再構成することでストーリー展開が解りやすくなっています。
ヌードルスがFRB襲撃に参加していなかった理由が映画版では分かりづらいのですが、宝塚版でははっきり描かれていることが良い例です。
映画版での青年期は時系列が乱れていますが、宝塚版の青年期は時系列順に並んでいるのも良いですね。

【2020/01/05 】更新内容

表を更新しています。
全カットしていると思っていた以下のシーンは宝塚版でもありました。

  • ファット・モーを拷問しているシーン
  • ヌードルスが阿片窟に居るシーン
  • ヌードルスがファット・モーを救出するシーン
  • ヌードルスがコインロッカーにある鞄の中身が空であることに気付いたシーン

その他気付いたこと

酔っぱらいから懐中時計を盗むのは映画版ではマックスですが、宝塚版ではヌードルス。

映画版ではヌードルスがデボラと別れた後はイヴがヌードルスの恋人になったと思われますが、宝塚版ではイヴ(エヴァ)はヌードルスとは無関係のマイアミビーチに居たダンサーの1人です。

映画版ではキャロルは宝石商の妻ですが、宝塚版では闇酒場(インフェルノ)のショーガールで、宝石商の妻は別にいます。

フランキーの名はあだ名で本名はマノルディ。宝塚版ではヌードルスが一度だけマノルディの名を台詞で言います。マノルディって何?とならないようにね。

デボラがヌードルスに対してパーティに出席しないように懇願するときの理由が宝塚版では「(ベイリー長官の)支持者じゃないから」でしたが、映画版では「(ヌードルスとデボラの間に)残ったのは思い出だけ。パーティに行けばそれも失ってしまう」です。
この後で(マックスとデボラの間に産まれたと思われる)青年と対面する可能性があったための台詞と思われます。
宝塚版では青年と対面するシーンがありません。だから「支持者じゃないから」っていう、つまらない台詞になったのでしょう。

宝塚版を2回見てもまだ違いがハッキリせず、まだ間違っている箇所もあるかと思います。

タイムテーブルには無いものの映画版でインパクトが有ったシーン(2020/1/8 追加)

以下はインパクトは有ったものの、ストーリー展開には影響しない事なので宝塚版ではカットされたと思われます。

  • 少年期にマックスが盗んだ懐中時計を警官が没収する件がありますが、その警官をヌードルスが女友達のペギーを使って美人局をやって脅し、懐中時計を取り戻した。(そのペギーは青年期になるとメッチャ肥っていた)
  • 出所したヌードルスをマックスが出迎える時に使った霊柩車の中に死体のフリをした全裸の女性が乗っていた。
    数少ない笑えるシーンの1つ。
    宝塚版では出迎えのシーンはありますが、車は出てきません。
  • 労組と会社側が対立していた時に警官隊を工場に突入させたアイエロ署長、彼の産まれたばかりの息子をパッツィらが病院で他の赤ちゃんと入れ替えて署長を脅した。

【2020/2/16 追加】

少年期のタイムテーブルに、宝塚版では酔っぱらいから懐中時計を盗んだのはヌードルスと記載していますが、実際はドミニクです。
ドミニクが盗んだ直後にヌードルスに渡しています。
警官と揉めているヌードルスをマックスが助ける一連のシーンを舞台の早い展開で見せるための映画版との違いですね。

宝塚版の感想

宝塚版ではデボラの存在が希薄なのが残念です。
宝塚版のデボラは優しすぎるんですよね。
いい子ちゃんていうか…
映画版ではヌードルス顔負けのしっかりした女性なのですが。

元々ギャングの話なので男の世界を描きたかったのでしょう。
女役ではデボラよりもキャロルの方が見応えがありました。
彼女はギャングの一味のような存在でしたから、映画と遜色ない出来だったと思います。

全体として蛋白でパワーに欠けますがこれは致し方ない。
映画版で欠けていたそれぞれのシーンの繋がり部分が新しく追加されて解りやすくなっていて好印象ですが、第二幕が急いでいる感じがしたのも事実。

それでも、映画の内容を考えると、よく仕上げたなという感じです。
しかもミュージカルですから尚更です。

個人的な話をすると、アマポーラの演奏が無かったのが残念です。
ミュージカルということで、この曲の使い方次第では泣けるシーンが出来るのではないかと思ったのですが、デボラの扱いが希薄だわアマポーラの演奏すら無いわで期待はずれでした。
バレエのシーンの変わり様にもビックリです。(娘役の出番がなかなかない作品なので、これも仕方のないこと)

せめて海辺のレストランのシーンでアマポーラの曲をバックにダンスをして欲しかったなあ。

 

以上、長々とお付き合いありがとうございました。

 

それでは、また〜

 

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